終章・契は言霊と共に

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 天の声は暗い。その理由に至るのにそう考えることもなかった。沙夜のことだろう。彼女はあの戦いの場から逃げおおせたと刀真は言っていた。結局彼女の言った事は真実なのか、真実だとすれば天はどういうつもりであったのか。  二人の合間に誤解はなかったのか。等々、疑問が次々にわいてくる。それでも、一真は天が何を言おうとも彼を見損なったり、見捨てたりしないと決める。昔の天がどうであったのであれ、天の力によって一真が救われ、月を助け出す事とは関係ない。それに刀真と交わしたという契を信じるなら、天は人間想いの剣である筈だ。だからこそ、自分の発言で沙夜が物の怪諸共、千年以上もの間封印されてしまったことを悔やんでいる筈なのだから。 「戦いが終わった後からずっと相棒と共に考えていた。お前や月の嬢ちゃんに力を与え続けるべきか、と」 「どういうことだ?」  一瞬の沈黙、そして天は溜息をついた。 「沙夜には俺が力を与えていた。戦うのが運命だから、と。だが、あいつは戦い続けた結果、何を得た? 彼女の結末は幸せとは程遠かった。たとえ、最後にあいつを守れたとしても……」  あいつ? 一真は眉を潜めた。守る者などいなくなったと彼女は月に聞かれ答えていた筈だ。怪訝を読み取ってか天は付け加えた。
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