終章・契は言霊と共に

9/11
918人が本棚に入れています
本棚に追加
/354ページ
「ほらほら、それ以上話しこまない」 「待ちくだびれたぞー」  後ろから碧と舞香の声が聞こえ続いて姿が現れる。二人とも一真達が戦っている合間にも、物の怪と戦っていたというが、目立った怪我もしていないようだった。  そして日向はそれ以上何も語らなかった。一真がなぜ生贄として選ばれたのか。日向とは対の存在とはどういうことか。答えを問い詰めたとしても彼女は答えないだろう。なんだかそんな気がした。もしかしたら――そんなことはないだろうが――一真が悩んでいるその事は些細な問題でしかないのかもしれない。  日向に――天にも――誓った事。それを日向は信じているのかもしれない。彼の中に何が眠っていても、守ると誓ったその時の心さえあれば大丈夫だと。  一真はあきらめて舞香に首を向けた。 「で、何を待っていたんだ?」一真が聞くと何故か、皆驚いたように顔を固めた。その視線を順に見ていくうちに気が付いたこと。それは全員が自分を見ていることだ。 「一真君、それはちょっとばかし罪深い発言だねー」 「いや、今まで寝てたんだから、わからなくて当然だろ」と抗議するものの、誰一人として聞いてくれない。 「未来は? 後、蒼さんは――」 「だあああああ、なんでそこで彼女の名が出てこない! まさか意図的?」  日向の言っている意味がわからない。彼女らの心配が先に来て当然のように思えるが。 「未来さんは家に帰した。まだ動揺してる感じだったけど、君と月が無事だったのを知って安心してた。蒼も無事、以上! 後他には?」 「他には……て。月はどこだ?」 「やっとそこに行き着いたかぁ!」
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!