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「お子さんには水子が憑いています。しかし…」
お寺の和尚は言葉を濁した。
水子。
この世に産まれる事の出来なかった幼い霊。それが私に憑いていた。
「気休めになればですが…」
そう言って和尚が差し出した真っ白な紙。それで体を拭いて、川に流す。その紙が見えなくなるまで流れて行けば助かる…
そんな神頼みのような話を、両親は真に受けた。
そして私は、体を拭かれ、体中に張り巡らされた管を抜かれた。
死を待つばかりとなった私は、母の腕の中で最後の一時を過ごしていた。
父の姉が川に向かい、紙を流すと、雪解け水に揉まれながら流れていった。
ずっとずっと先の、見えない川下へと。
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