序章【打つ者、打たされる者】

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牌が卓の中心に無造作に並べられる音だけが部屋を木霊する。 「リーチ」 『この決勝戦、オーラス(最終局)の沈黙を破ったのは東家の萩野癒月だ! 今大会個人戦の優勝候補である中学三年生だ! 25,000点持ちで始まったこの試合、なんと萩野が2位と20,000点以上の差をつけトップでリーチを掛けた!』 (私、どんな感じで実況されてるのかな……) 癒月が単独トップにたつ最中、諦めずに他家も手を進めていた。 そのうちの1人、南家。 長身の男ということもあり、牌を置く動作に威圧を感じる。 3年生にして、初めて大会に顔を出した実力未知数の少年。 初戦、2回戦ともに他家を役満で飛ばしたダークホースだ。 そんな少年に引けを取らず、対面に座する長髪の少女。 他家に自分の捨牌で和了らせることのない、手の見極めに優れた最強の選手。 そして北家の少女。 明らかに雰囲気が違う。 まるで、常に場を掌握しているかのように錯覚させる流れのスペシャリスト。 しかし、そんな選手達をも凌駕するのが癒月だ。 「ツモ」 癒月が山からツモった牌、そして手。 それは勝利を飾るのに相応しい役だった。 「国士無双。16,000、8,000」
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