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ピピピ ピピピ ピピピ……
枕元からの不快な音を手だけで探し当て、アラームを止める。
カーテンからは柔らかい日の光が差し込んでいた。
洗面所へ向かい鏡を見ると、そこには癖っ毛で猫背の、線の細い少年が映っていた。
軽い食事を済ませ、家を出る
5月のはじめ。
二年目の通学路。
都心からやや離れた場所に、俺の通う高校はあった。
まだ通勤時間ではないらしく、人通りの少ない、静かな町をゆっくりと歩く。
道の両脇には立派な八重桜が咲いている。
ヒラヒラと、眼前を過ぎ去って行く無数の花びら。
その内の一枚を無意識に手を伸ばし掴み取ろうとする。
握りしめた拳をひらくと、その中には花びらが、
………なかった。
しばらく自分の手のひらをぼんやりと眺めていたが、途端に興味を無くし、俺はまた歩き始めた。
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