3人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはよう」
登校者の中に見知った顔を見つけ声をかける。
「遠野先輩、おはようございまーす!」
「……はわっ、お、おはゆござ……!?」
……元気な挨拶を返したのは、一年生の近藤 佐由利(コンドウ サユリ)だ。いかにもスポーツ少女といった風貌で、ショートカットと小麦色の肌がよく似合っていた。
そして、朝の挨拶すら噛んだ少女は、近藤と同じく一年生の結城 咲良(ユウキ サクラ)。
近藤とは正反対の、いわば文学系で、おとなしい雰囲気である。やや大きい瞳に、肩口で切りそろえられた髪と白い肌は、総合的に幼い印象を放っていた。
「近藤、部活楽しい?」
「はい! でも今は仮入部期間で陸トレがメインなんです。あたしはいつも帰ってから自主トレしてますね」
「そっか、近藤なら自主トレも相当入れ込んでそうだよね」
近藤は女子ソフトボール部の期待の新人らしく、仮入部の時点でレギュラー入りを約束されているようだ。
サウスポーから繰り出される“剛”速球で、中学生時代は並み居る強豪校を押しのけ、全国ベスト8入りした事があると聞いていた。
「あはは。バレました?」
「いつも居残りしてただろ? 勉強も」
「ちょ、ひどーい。勉強は居残りじゃありませんよー。さくらもなんか弁護してよ」
「へ? ……うん。さゆ、古文の先生と仲良いよね? 良くお昼休みに話してるし」
最初のコメントを投稿しよう!