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復讐の念を募らせながら、1秒に1回のハイペースで腕を屈伸してると、囃(はや)し立てる声に混ざって「ガチャッ」と扉が開くような音が聞こえた気がした。
腕を伸ばし切る途中で顔を上げると、オレを取り囲む脚の林の向こうにあるこの部屋唯一の出入口が開かれてて、更に奥の廊下に誰かの脚が見えた。
「ほぉ?何か楽しそうなコトしてんなぁ?」
突如現れた鶴の一声で部屋中の空気が一気に凍り付き、周りの奴等がザッと声の主に体を向けて直立不動になる。
(このただならない雰囲気は……幹部だ!)
事態を察したオレも、低い体勢からワンテンポ遅れて周囲に倣(なら)う。
(何で幹部がこんな所に……?)
他の奴等も予想外の訪問者に相当戸惑ってるみたいだった。
だが幹部様はそんな事お構いなしで部屋に入ってくる。
金髪にサングラス、上下黒のスーツに江戸紫のワイシャツ、襟元からはシルバーのチェーンネックレスが覗いて、お高そうな革靴が足音を響かせる。
その端麗な顔立ちとほっそりした体付きから、見様によってはホストに見えなくもない。が、それとは明らかに違う威圧感を放ちながら、幹部様は前に居た連中の間を擦り抜けて、事もあろうにオレの正面で立ち止まった。
眼前に居られるだけでも緊張するのに、いきなり両肩を掴まれた所為で、喉から飛び出そうなくらい心臓が跳ね上がる。
更に追い撃ちとばかりに、視線を合わすまいと顔を伏せてたオレを、幹部様が屈んで覗き込んできた。
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