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『そっちはどうだ?』
『異常ありません』
左耳のワイヤレス式イヤホンマイクから聞こえてくる先輩と同期の口数少ない会話をBGMに、校舎の壁伝いに中庭を進む。
小柄な体格が相成って、少し屈むだけでオレの体は雑草の茂みに沈む事が出来た。
これで迷彩服でも着てたら誰にも見付からないんだろうけど、残念ながら今は黒のストライプ入りワイシャツにジーンズという、まだ入日影(いりびかげ)が眩しいこの時間帯には不向き且つ暑苦しい格好。
多分、真上から見られたら1発で見付かるなー、なんて呑気な事を考えてると、不意にBGMが鮮明な問い掛けに変わった。
『おい、聞こえるかチビ?』
「……すんません先輩、聞こえませんでした」
『あれっ、電波悪いのかな?おチビさ――』
「もっぺん言ってみろ。口ン中撃ち抜いて2度と喋れなくしてやる」
オレは左手に所持してた愛銃をイヤホンマイクに近付け、ハンマーを引き倒して、わざと音を立てた。
職歴的にも年齢的にも先輩である人にこんな暴言吐くとか人としての道理に反するけど、だがしかし毎度毎度言われ続けりゃ寛大なオレでも堪忍袋の緒が切れるわッ!!
……が、通話先にそんな脅しは通用せず、それどころか『自覚はしてんだな』と笑われた。
――後で、殺す。
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