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はっきりとそのことに気づいたのは、最初の自己紹介から二週間以上経ってのことだった。
初めこそ僕は彼女のことを警戒ないし不安に思っていたのだが、クラス替え前のあの時以来僕に絡んでは来なかったので、
(もっとも彼女はあっという間に女子特有の仲良しグループを作ってしまっていたので、もしかしたら僕に話しかけるタイミングを逃していただけなのかもしれない)
三日も経った頃にはすっかり安心したどころか、大変失礼なことに彼女の存在を早くも忘れかけていた。
ところが実際は僕が気づくのが遅かっただけで、彼女はちゃんと絡んでいたのである。
朝の登校時間――――。
僕は家が学校から近いということもあって、またバスケ部の朝錬が朝のホームルーム十分前に終わるので、教室に入るのはクラスのみんなが一通り揃って、賑やかに談笑している頃になる。
ところがみんな話すのに忙しいせいなのか、僕自身の存在が薄いせいなのか、はたまた僕が人と深く関わらないようにしていることを察知しているせいなのか、一年前から挨拶をされたことがほとんどと言っていいほどない。
なのでこの日も僕は誰にも気づかれずひっそりと自分の席につき、自分の世界に閉じこもるために文庫本を鞄の中から引っ張り出そうとすると、
「あ、おはよう」
突如斜め上から降ってきた涼しげなソプラノの声。
顔を上げて見ると、そこには穏やかな笑顔をこちらに見せている可愛らしい女子の姿が。
――――た、たしか、高島桜さん……だったけ?
僕に挨拶をするなんて変わった子だなぁ。
記憶の海の中から辛うじてその名前を掬い上げると、僕はぎこちない笑みを浮かべて、返した。
「お、おはよう」
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