序章 透明人間が色づき始めた頃に

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やや色褪せてしまった文庫本を手にとって、昔を懐かしんでいた。 あの頃……高校生だった僕は、これといった特徴のない、それでいて人と深く関わりあいになるのが怖くて、親しかった友人の一人もいなかった、いわゆる“臆病な透明人間”だった。 だがこの文庫本の本来の持ち主である彼女。高島桜さんと出会って、透明人間にも確実に色がつき始めてきている。 今は、いったいどこでなにをしているのだろう? この気持ちを伝えたいのに……もう何年も会っていない。
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