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僕が顔を上げると、そこには柔らかい笑みを浮かべている一人の女の子の姿があった。
目鼻立ちは整っていて、輪郭はやや丸く、少し茶が入ったさらさらのロングストレートの髪が目に留まる。
身長は上背のない僕が椅子に座って見上げても、あまり視線の角度が変わらないほどのミニマムサイズ。
しかもセーラー服(僕達の通う北園高校は男子は学ランで、女子はセーラー服が制服となっている)から覗いている首や手や足はびっくりするほど細く、また雪のように肌が白いため、まるで人間サイズの人形がそのまま動いているようにしか見えない。
美人というよりは可愛いと呼ばれる部類の子だった。
突然女子に声をかけられて僕は少し困っていた。
女の子と話すのは正直得意ではないからだ。
動揺もしている。
それでも言葉は自然と口から漏れた。
「そうだよ。よく知ってるね」
「うん。一度読んだことあるから」
「外国の古い小説を? すごいね」
「すごいって、君も今読んでるじゃない」
変な人。
そう言って鈴の音を転がしたようにくすくすと笑う彼女。
僕はなんだか気恥ずかしくなって、視線をあらぬ方向に逸らしながら、ははは……とぎこちなく笑ってみせた。
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