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“じぶん”が初めて見たのは真っ暗な闇…
湿気が多くてジメジメで、そして誰もいない無力感に苛まれるだけの存在である“じぶん”はちっぽけで
“じぶん”が誰なのか
いつからここに存在を記していたのか
何もかも分からない…
ただ分かるのは、顔を覆い尽くすばかりの髪と
汚れた体…醜く伸び放題な黒い爪
そして…“じぶん”は衣服を身に着けていないということだけ
?「……寒い。」
呟いた声は“じぶん”が聞いた初めての声
初めて発せられた感覚
?「……“じぶん”は…誰…?」
両手を見れば泥で汚れ、顔を上げれば遠くに見える外の“光”
それでようやくここが
洞窟であることに気付けた
?「……誰か……」
ふと洞窟の奥の方を見ると、“じぶん”以外にもう一人横たわっているのに気がついた
その人は“じぶん”と同じで、髪は顔を覆い尽くす程長く、汚れていて、服を着ていなかった
?「あの……もしもし。」
その人に呼びかけてみても、その人はピクリとも動かない
?「ビルは死んだのか?」
突如聞こえてきたのは女性の声
?「お前は…この闇を生み出す洞窟の新入りか…」
“光”を背にするその幼い姿には似合わず
血のように紅い眼は妖艶で美しく思った
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