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?「……貴女は…誰…ですか…?」
その幼い紅い眼の子は恐れなど持ち合わせいないかのように、洞窟の中に入ってきた
レイシー「私か…?私は“真実の語り部”黒ウサギのレイシーだ。」
?「真実の……語り部?」
レイシー「何だ…知らないのか?我々には“役割”が存在するのを…」
その目の前の黒ウサギ・レイシーと言う子はしゃがみこみ、指を動かないもう一人に向け言った
レイシー「この“不思議の国”で“役割”を持たずして生まれてくるのは、ほぼ無意味なこと…。そこの者の名はトカゲのビル…」
?「ビル……」
トカゲ…それを言われてもう一人・ビルの体に浅緑色の鱗があるのが見えた
レイシー「ビルはお前の兄だ。」
?「……兄…?ビルが…?」
ビルが
“じぶん”の兄
トカゲの兄を持つ“じぶん”は
?「ぁあ……ぁあぁああぁあ!!!」
腕や足、体の全てにはビルと同じ浅緑色の鱗が光っていた
レイシー「醜いな…どうだ?自分の醜さに気付いたか?トカゲの子よ…」
?「“じぶん”は……“じぶん”が誰だか分からない…っ!!“じぶん”はこんな姿は嫌だ!!それだけは分かる!!」
激しく取り乱し、ぐちゃぐちゃになる程泣く哀れな“じぶん”を見たレイシーは怪しく微笑みを浮かべ
レイシー「哀れなトカゲの子…一番誰が哀れで無惨な運命を背負わされたか知らずにそれを口にするな…。」
?「!?」
凄まじい力で首を鷲掴みにされ、紅い眼は間近で爛々と輝いていた
レイシー「それはな、ビルだ…。“役割”を持たないビルは本来生まれてくることは無かっただろう…それを“役割”を持つ者の兄であった為に、洞窟(ここ)で千の苦しみを味わったのだ。」
?「……“じぶん”の所為で?」
レイシー「私はビルがこの洞窟の闇に殺されるまでずっと…話し相手をしていた。」
レイシーは首から手を離すと、静かに眼を閉じた
何かを思い出しているのか
“じぶん”には理解出来なかった
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