story6、歪みのハート

5/7
前へ
/27ページ
次へ
それからまた いくつもの年を越えた ある美しい花びら散る暖かな昼下がりに 女王は突然言ってはならない言葉を発した ジャ「……女王、今何と?」 大ホールの王座に座るダイナは面倒と言わんばかりに膨れっ面で、シンプルな手紙を片手にヒラヒラさせながら再度口を開いた ダイ「宣戦布告をされたのよ。在りもしない国の女王だと名乗る女にね…」 でも… ダイ「この手紙を直接渡された訳じゃないし、女…だとは言い切れないけれど…受け入れることにしたの。」 敬意を示し、跪くエースとジャックに目を向けると、ダイナは口元を歪ませた ダイ「その女は“白の女王”と言ったわ…。白の女王は私を殺し、この“不思議の国”を奪うつもりよ。」 エース「……それは一大事ですね。特に我々ハートの女王様の側近にとっては…」 エースもまたダイナをまっすぐ見つめ、にっこりと笑った ダイ「でしょう?だから、どちらが本当の王であるか…白黒はっきりつけさせる為にエースかジャック、どちらかが“白の女王”の所へ行って私の手紙を届けて来て欲しいの。」 ヒラヒラさせていた手紙を2人に向け差し出し、近くに置いていたフルーツバスケットから林檎を取り出すと、一口かじった エース「なるほど…それなら私が預かろう。」 エースがそう言った瞬間、ダイナは今までにないくらい無垢で新鮮に顔を赤らめ、嬉しそうにはにかんでいた ジャ「………」 在りもしない国の白の女王から届いた宣戦布告 国の一大事…そんな冷たい事情にあるはずの緊張感の中 我らが女王は 笑みを浮かべる余裕を見せている これ勇敢たりし王である証と見て良しなのか 他に理由があるのか この時のジャックには何も分からなかった ただ 心に染み渡る違和感だけが 感じられた…
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加