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その女の前歯は醜くヤニで黄ばんでいた──
センスに欠けるブラックライトがぼんやりと店内を照らし出す。
薄暗くカウンターの向こうにいる若い女達の顔がはっきりとは見えない。
ウィスキーやカクテルを作るためカウンターに小さなライトが取り付けられていて、
女達の白い手元だけを浮かび上がらせている。
派手なネイルアートが施された女達の手がカウンターの上をせわしなく這い回る。
店内の照明が極力、押さえられているのは優れていない女達の容姿を客の目に晒さないための工夫らしかった。
先程から何度かカウンターの向こうで酒を作っている若い女に話掛けてみたけど
分量を間違えた水割りの様に薄い“答え”しか返ってこない。
この世の中、概ね自分の出した金と店のクオリティは比例するみたいだ。
私は三杯目のハイボールを女に注文し、そのついでに用意していた質問をぶつけてみた。
「あのさ…… 何か都市伝説みたいなの知らないかなぁ? 」
若い女が酒を作りながら誰でも知っている都市伝説を得意気に話始めた。
私はウンザリして出てきた酒をすぐに口に運ぶ。
隙間だらけの黄色い歯を見せながら女がまだ話していた。
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