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日付が変わる直前に住んでいるアパートに辿り着いた。
怠慢な管理人が取り替えていないせいで、廊下の蛍光灯が不規則な明滅を繰り返している。
足下に気を払って自室のドアの前まで進んで行く。
アルコールで痺れた頭で足下に気をやらねばならない事が煩わしい。
漸く自室のドアの前まで来たのでジャケットのポケットに手を突っ込む。
あれ……?
鍵がない。
酒が回っているので指先が緩慢にしか動かない。
雑で鈍い自分の動作に緩んだ感情が苛つく。
探っても探ってもそこにある筈の鍵が指先に触れてくれない。
僅かな望みを託し一応、ジャケットの内ポケットやスボンのポケットも調べてみたが指先に鍵が触れる事はなかった。
あろう事か鍵をどこかに忘れてきたか、落としてしまったかしたみたいだ。
自分の失態に腹わたが煮えくり返った後、置かれている状況に気がつき途方にくれる。
そのまま暫くドアの前で放心していると
どこかから足音が聞こえてきた
女性のヒールが床を踏む乾いた足音。
足音が徐々に自分の方へ近づいてくる様な気がした。
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