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お風呂から出たら、潤はいなくてこれは白昼夢(もう夜だけど)でしたーって展開もありうると思っていたあたしだったけれど。…でも、やっぱり夢じゃなかった。
ふんふんと鼻歌交じりで、テーブルに晩ごはんを並べている潤。
ふにゃふにゃした柔らかい色素の薄い髪、男のくせに黒目がちな瞳。肌の色が透けるように白いせいで、小さい頃はよくハーフとか女の子に間違われていた。
オトナになってからはこんな近距離で見たことがなかったけれど、これは間違いなく、潤だ。
「で?」
あたしは、潤の作ったロールキャベツを箸で口に運びながら尋ねた。意外に、おいしい。
「で、ってー?」
「あんたが、なんでここにあがりこんでんのか、ちゃんと説明してよ」
場合によっては、おまわりさんに通報されてもおかしくないんだからねっ?
あたしはじろりと潤を睨んだけれど、潤は怯むことなくいつものへらりとした笑顔を浮かべる。
「んー・・俺さ、就職こっちに決まったんだよ。うちの会社、内定者はみんな夏休みの間にインターンで一ヶ月間働くことになっててね。それが明日からなんだけど、そのインターンの話が決まったとき、せっかく東京来るんだし、澪ちゃんの連絡先くらい聞いとこうと思って久々に澪ちゃんち行ったんだ。そしたら、おばさんから、澪ちゃん急にルームメイトに出て行かれて困ってるって話を聞いて。んで、どうせ部屋空いてるみたいだから、俺がこっちにいる間、泊まればいいんじゃないのってコレくれた」
発泡酒の入った缶に口をつけながら、ごそごそとデニムのポケットからスペアキーを取り出す潤。
「これうちの鍵!?」
お母さん!?何してくれてんの!?ふつう、娘のアパートの合鍵を、22歳の男に渡す!?しかもあたしに無断で!
いくら、潤がオムツしてるときから面倒見てる息子みたいなもんだからって、あたしたちは姉弟じゃないし、血のつながりないっつーの!
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