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「ちょ、それ返して。宿泊費とか、交通費って会社で出るでしょ!?どっかマンスリーマンションとか泊まればいいじゃん。いくらなんでも、うちに―――」
鍵に手を伸ばそうとしたあたしから、潤はさっと鍵を遠ざけた。
「潤!?」
「澪ちゃんが困ってるっていうから、俺ここに泊めてもらう事にしたんだよ?それに、インターンは明日からなのに、今から宿泊先探すなんて無理だって。ねー澪ちゃん、ちゃんと宿泊費も払うから、ここにいさせてよー」
潤は甘えたような声でそう言って、テーブルの上に銀行の封筒を取り出し中身をちらつかせる。
ゆ、諭吉が!ひぃ、ふぅ、みぃ…
あたしは思わずツバを飲み込む。
「たった1ヶ月だけだし。ね?」
潤があたしの顔をのぞきこんで、にこりと微笑む。
手渡された、諭吉たち。これがあれば、ここから引越しできる日も近い…?
「ほんとに・・一ヶ月・・だけだよね?」
そう言ったときのあたしは、すでに掌の中の諭吉を手放すことなどできなくて。だって、本当にお金がなくて困ってるんだもん。
「そう。一ヶ月。そしたら、ちゃんと出て行くから。絶対澪ちゃんにヘンなこととかしないし。あ、もちろん澪ちゃんがして欲しいならするけど?」
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