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次の日の朝、なんだかいい匂いがして、あたしは目を覚ました。
とりあえず友里香の部屋を使うことになった潤は、あたしより一足早く起きていたようで。
「あ、おはよ。朝ごはん作ったよ」
「あ・・・ありがとう」
テーブルの上に並んだ、玉子焼きとごはんとキャベツ(←冷蔵庫にまだまだある。)の味噌汁。超おいしそうなんですけど。
朝から白米炊くとか…どんだけ女子力高いの、潤さんよ。
ちなみに、あたしも友里香も、コンビニのパンとかおにぎりで朝ごはんをすませることが多かった。作ってもトーストにバター塗るだけとか。
「いただきまーす」
あたしの席の向かい、友里香がいつも座っていた椅子に潤が座る。無邪気な笑顔で、ご飯を食べる潤。
「澪ちゃん、おしょうゆとってくれる?」
「あ、はい」
「ありがとー」
数年間のあたしたちの隔たりなどまるでなかったかのような、昔と少しも変わらない親しげな態度。
だけど、箸を持つその指も。だらしなくずれたタンクトップから見える大きな肩も、長い腕も、テーブルの下に持余すように投げ出された脚も。
あたしの知ってる、喘息もちで熱ばかり出していた、ひ弱な潤のカラダとは全然違っていた。
昨日は、ただただ混乱していて気づかなかったけれど、潤はすっかりオトナの男なのだ。少なくとも、実年齢と外見は。
「たまご、甘いの嫌いだったよね?出汁巻きが好きだよね、澪ちゃんは」
ぼんやりと、潤を見ていたあたしはそう聞かれてはっとした。
「う、うん。超おいしいよ、これ。すごいじゃん」
「でしょー?俺すごいでしょ?」
ほめられた犬みたいに嬉しそうな潤は、尻尾でも振りそうな勢いだ。まあ、中身はたいして子供の頃と変わってないみたい。
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