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朝ごはんを食べ終わって、身支度を済ませる。
「潤ももう行くんでしょ?会社どこ?」
「えとね…タメイケヤマオー?」
そう言いながら、アンダーシャツの上にしわしわのシャツをそのまま羽織ろうとする潤。
「それ、溜池山王って読むの。さ・ん・の・う。じゃあ途中まで一緒か。てゆうか、あんたそのシャツで行くつもり?」
「んー・・昨日から鞄ん中入れたままにして忘れてた。ま、いいよ、帰りに新しいやつ買ってくる」
「よくないよ!あんた学生って言っても、初出社でしょ?内定消されたらどうすんの!ちょっと、脱いでそれ」
あまりのくしゃくしゃぶりに見かねて、あたしは潤のシャツに手をかけた。
「えー、澪ちゃん朝からそんな大胆な」
「バカ!アイロンするのよ!」
わざとらしくボケる潤をひとつはたくと、あたしはクローゼットの中からアイロンを取り出し、ささっと霧吹きで湿らせた後、すいすいと皺を伸ばしていく。
男性もののシャツなんてアイロンしたことないけど、時間もそんなに残ってないし、だいたいで。襟と袖口、ヨークはわりとしっかり当てて、背中の部分を内側から、そのあとは腕、最後に皺になりやすい前身ごろ。
その様子を隣に立ってみながら、潤は目を細める。
「澪ちゃんアイロン上手だね。皿洗いも掃除もテキパキしてるし、きっといいお嫁さんになると思うよー、俺の」
「は!?…アチっ!!」
突然吐かれたそのセリフに、あたしは思わずアイロンを指先にかすってしまった。
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