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家に帰って、急いで部屋を暖めて序にお風呂も沸かしちゃう。
明るい中で見た子供には、少し汚れてしまっていたけど白い耳と尻尾が付いていた。
「…にゃんこちゃん」
ソファに座らせた子供の身体を毛布で包みながら視線を合わせて笑いかけると、ピクピク耳が動いて可愛かった。
「お名前教えてくれますか?」
さっきまで服を握っていた小さなてのひらを優しく包み込みながら首を傾げると、大きな瞳がゆらりと揺れた。
クイっと顔を上げた子供の首には少しキツそうな細い首輪。
傷つけないようにそっと外すと、首輪には"MAMORU"の文字が刻まれていた。
「…まもる、マモルくんって言うの?」
「……」
少年…、マモルくんは無言のままコクンと小さく頷いた。
薄らと首に残る首輪の後を優しく撫でて、怖がらせない様に隣に座ると、俺の動きに合わせて視線が動いた。
身体を抱き上げて膝に座らせると、ポフっと抱きついてきたから…俺もふわりと抱き返す。
「可愛いね…マモルくん」
抱き締める腕に微かに力を込めると、ポンポンって小さな手が苦しいよって伝えてくる。
「あのね、もし良かったら…このまま俺と暮らさない?」
服を掴んでくれたとは言え、勝手につれて来たのはほかならぬ俺…
首輪をしていた。
短い時間でも誰かに飼われていた証拠…
もしかしたら、飼い主の気が変わって探しにくるかも知れない。
だから、不安と期待を込めて…聞いてみたんだ。
「……」
「…良かったら、だけど…」
何も言わない、動かない。
見つめあった瞳に自分が映って、何とも情けない顔をしている。
駄目かな…って肩を落とすと、不意に抱き締める腕に柔らかな何かが触れた。
それは、彼の長い尻尾で…スルリと腕に巻きついた。
「…マモルくん…良いの?」
聞けば、無表情だった顔にふわりと華が咲いたような笑みを浮べたから…
俺はまた、力いっぱい小さな身体を抱き締めてしまったのだ…。
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