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『こういうのがあると運動会らしくなりますねー。』
そしてまた男は顔面にわざとらしい笑みを作った。
『さっさと立て!!』
星那ははじかれたように座席から立ち上がった。
真っ直ぐに歩ける自信がない。
「セナちゃんっ……」
一番後ろの席から小走りに出てきた菜摘が、星那の肩にしがみつく。
菜摘は色白で可愛いと評判で、入学した頃から男の先輩にすっごいチヤホヤされてたっけ。
星那は菜摘の指を肩に感じて、こんな女の子が戦闘なんてできるのだろうか…と思ってしまった。
“若杉の下で菜を摘むような女の子に育ってほしい”と両親につけられたその名前にぴったりのお嬢さんだ。
もしこれが普通の郊外学習だったら、竜之介を意識してしまって、そして愛らしい菜摘の存在にやきもきしていただろう。
ただ今はそれどころではない。
第一班はその場で白いジャケットとヘルメットを身につけた。
バスから出る寸前、竜之介は振り返ってクラスメート全員に聞こえるように言った。
「…生き残るぞ、全員な」
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