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「坂本、今すぐヘルメットとパーカーは脱ごう」
「えっ…でも…大丈夫なの」
「これを着ていたら、確かにA組に見つかった時は味方だっていう合図になる。
でも今はB組の奴らに見つかる危険を少しでも減らしたいんだ。
これをずっと着てなきゃ首輪が爆発するとか殺されるなんてルールはなかったはずだ。
パーカーは脱いで、ヘルメットは布か何かで色を隠すんだ」
「…それもそうだよね」
星那は竜之介の言う通りに素直にパーカーを脱いだ。
5月も半ばで夜とは言え気温はむしろ少し暑いくらいだ。
星那のパーカーの裾には、スカートと同じようにべったりと血の跡がついていた。
白いパーカーが仲間の流した血で半分紅く染まっている…
思い出すと気分が悪くなってきてしまった。
「私、ちょっと気持ち悪くなってきちゃったよ…」
竜之介は脱いだパーカーの代わりに星那の肩に自分の学ランをかけた。
「…無理もないさ。さっき目の前で隼人と翔が殺されたんだ。俺も正直きついよ。
でも…今は先のことだけを考えよう…」
竜之介は星那に見えないように顔を伏せた。
竜之介は二人きりになってしまった今も班のリーダーとして、ペースを守ろうとしている。
千葉くんも、苦しいんだな…
星那は下を向いた竜之介の肩を抱き締めて頭を撫でてあげたい、と思った。
だが身体は石のようにその場で固まったままで、何もすることが出来なかった。
夜は、更けていく。
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