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三塚ひとみの母、三塚りえ子は娘の学校での態度について何度も呼び出されていたが、それをあまり気にしたことはなかった。
それというのも、彼女が昔から自由奔放な生き方を好んできたからである。
ひとみの性格は完全な母親譲りだ。
りえ子がひとみを妊娠した時、男は逃げた。
当時23歳だったりえ子はそれを大して悲観することもなく、キャバレーで働いていた頃に付き合いのあったいわゆる「パパ」に面倒を見てもらい、その「パパ」の子供としてひとみを産んだ。
りえ子は生活の援助を受けながらシングルマザーを続けてなんとかやりくりしていた。
こじんまりしたアパートに、三塚の母娘は暮らしていた。
この日の朝も、娘は中々起きてこないがいつものことだとりえ子は気にも留めなかった。
起きてからもひとみの風呂は長く、家を出るのが昼過ぎになることは日常茶飯事だった。
いつも通り、よく手入れされた長い髪をしっかりとブロウしてからセーラー服で家を出るひとみを、声だけで見送った。
玄関のベルが鳴ったのはその10分後だった。
ー三塚ひとみに召集命令が来ていますー
政府の人間であることを表すワッペンを胸につけた男が、武装した兵士二人と家の玄関に入ってきた。
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