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バスの中のマイクロフォンで話し始めたのは知らない男だ。
担任の千春先生の姿は見当たらない。
はじめに乗っていたはずのバスガイドの女の人の姿も…
『おめでとうございます。今回あなた達鷹月南中学校3年A組は政府主催の戦闘シュミレーションの対象クラスに選ばれました』
一瞬だけバスの中が水を打ったように静まり返った。
「そんな、まさか」
後ろの席から小さな絶望の呟きが聞こえた。
『しかし!…よく聴いてくださいねー。今回行われるシュミレーションは、今までの皆さんがよく知っているような、クラスメート同士の闘いではありません』
勿体ぶったように男は続けた。
『新たな戦闘のデータを取るため、政府の偉い人達が考えた、新しいシュミレーションが今回適用されます。
…今回の戦闘相手は、あなた達と同じ鷹月南中学校の3年B組です』
「えっ…」
「B組と…」
『はい私語は慎んでー。
安心してください。
敵はB組です。さしずめクラス対抗の運動会だと思えば良いでしょう。
つまり、今ここにいるA組諸君には助け合っていただきます。それが勝利への道です!
簡単にルールを説明しましょう。
先に相手のクラスを全員殺した方が勝ち。
ただし、死者が出ない状態が24時間続くと参加者全員が処刑されます。
敗者には死が、勝者には生きて家に帰る権利が与えられます。
今私たちが来ているのは、閉鎖されたエキスポランドです。ご存知ですね?よくここで幼い頃に遊んだ諸君ならば。』
隣でごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。
古川が目を見開いていた。完全に思考の限界を超えているらしい。
『エキスポランドはご存知の通り何年も前に廃園になりました。
その後すぐに新しい国の取り決め上の理由から万博記念公園も廃園になりましたね。
今回はこの二つがバトルに使われる場所です。
逃げ出すことは不可能です。万博記念公園とエキスポランドの周囲は軍隊が取り囲んで、完全に封鎖しています。
それと』
男と目が合った。ような気がした。
心臓の鼓動がどんどん早くなる…
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