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訝しげな梨花の視線に青年は笑う。
優しげ笑みだった。
「ああ、悪い。俺は原田左之助だ。で、お嬢さんは?」
ここにきて、まだ自分が名乗っていなかったことに気づく。
梨花のことで口論している二人も、誰一人として梨花の名を聞かなかったからうっかりしていた。
「あ……神木梨花(かみきりか)です。………えっと……原田さん?」
「ん?」
「何で私のことを『お嬢さん』って……」
あの青年も”女の子”と言っていた。
「---あ-? みりゃ判んだろう?」
あっさりと応える声に唖然とする。
旅の間、誰一人梨花を女の子とみた人はいなかった。
それが、この人たちにかかると当然のように言われる。
「-----えっ?! 女の子なんか?」
先程、土方に”新八”と呼ばれた男が驚いた表情をする。
「やっぱ……もしかして、と思ったんだけど……」
梨花とさほど歳が違わなそうに見える青年も驚いたように言うところを見ると、全ての人間に判っていたわけではないらしい。
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