動きだす運命

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柔らかな風が頬を通りすぎる。 風に乗って何処からか花弁が舞い降りる。 その光景に少女は空を見上げた。 この寒い北の大地にその花びらが届く、ということは何処かで花が咲いたという証。 「---ふふ。”花信”ね」 (花信とは花が咲いたという便り) 嬉しそうに頬を綻ばす。 美しく伸ばさた髪は背の方で一つに括られている。 どこか、時代がかかったように見えた。 雪に閉ざされたこの地にも漸く春が訪れる。 「--姫様!大変でございます!」 自分つきの侍女のあわただしい足音に、少女は眉を潜めた。 春の便りに心弾ませた気持ちに水をさすような侍女の振る舞いが不愉快だった。 だが、現れた侍女にそんな内心を悟られないよう優雅に振り向いた。 内心を悟られるような育て方はされていなかった。いつでも、たとえどんな苦境においても、それを表にだすことなく振る舞うことが、誇り高き者の在り方なのだと---そう教えられてきた。 「何事ですか?」 16歳ぐらいの外見には似つかわしくないほど、大人びた口調で侍女を嗜める。 長年の付き合いの為か、主の僅かな苛立ちに気づいた侍女はその場で膝を折る。
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