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(……我らでなければ……この傷で生きているなど無理……)
「申し訳ありません。私たちも久光様と離れていた時のことで……。倒れていた久光様をお連れしただけで………」
「何で兄様が一人で行動を?」
「わかりません。ですが、けしてついてくるなとの命で……」
何一つ判らず、少女は唇を噛み締める。
ギリッと噛み締めた唇から血の味がした。
兄についていき、何も役にたたなかった彼らに腹をたてながらも、少女は兄を部屋に連れて行き、安静にさせるように命じる。
「……姫様。一つだけ……この道中、久光様が一度だけ”鬼が…”と呟かれまして……」
「鬼?」
「はい」
「----兄様は京にいらしていたのよね」
風の噂では、今の京は動乱の時代だという。
何があっても不思議ではないが………。
全てを知るには-----。
「京……」
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