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「………はぁ」
梨花はため息をつく。
故郷からこの京に漸く辿りついた。
だが、目的を達するにはかなりの時間が必要だと気づく。
古くから都であっただけに、人が多い。
ましてや、今は様々な思惑を持って京にきているものもいる。
「…………姉様は……」
久しく会っていない歳の離れた姉も今、京にいるという。
詳しい居場所を聞いていなかったのは失敗だった。
反対している者たちから逃げるように旅だった。
女一人での旅路は危険と思い、男装しての旅である。
---高い位置で髪を縛り、男物の着物を着ただけだが………。
「----だーれも疑わないのよね」
道中、幾度『ぼうや』と言われたことか。
確かに気づかれてはいけないのだが、誰一人疑問に思わないのも---虚しい。
不意に賑やかな通りに、少し緊張感を持ったざわめきが聞こえてくる。
そちらに視線を向ければ-----。
「----新撰組」
京に来て、すぐに耳にした言葉。
この京の警護に来ているという幕府の人間たち。
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