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京を歩き回り、梨花は一つの寺へと入る。
疲れて休む場所が欲しかっただけなのだが、この寺のなかから子供たちの声が聞こえてきてふらりと立ち寄っただけだった。
数人の子供たちが遊んでいる。
それを見ながら大きめの石に腰かけた。
「----はぁ、やっぱ甘かったかしら」
決意を固め、京に出てきたが、やはり周りが止めたように世間知らずの浅知恵だったらしい。
京にいる、と聞いている姉の所在さえ判らない始末。
「何が甘かったんですか?」
不意に背後から話し掛けられ、梨花はバッと後ろを振り返る。
ニコニコと優しげな笑みを浮かべ、一人の青年が立っていた。
歳のころは20を超えたあたりだろうか。
人あたりのよさ気な笑顔をしている。
幾分顔立ちが女性に人気のありそうな……と思いつつ、梨花は訝しげに青年を見た。
(---ここには子供たちだけだったはず……)
子供の姿しか見えなかったから安心して入ってきたのだ。
動揺している梨花を気にせず、青年は隣に腰かける。
「----すみません。何か悩んでいるみたいだったのでつい声をかけちゃいました」
あはは、と笑う青年を見て梨花は小さく息を吐く。
いきなり現れて声をかけてきた青年に思うことはいくつかあるが、少なからず敵意は見当たらない。
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