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プロローグとかすっ飛ばした第一章
-賑わう商店街。セールのためおばさんで溢れるデパート。
どこにでもあるような町に、どこを探してもいないような家族がいた。-
「ちょっと、バカ犬。私のペンダントどこやったの」
さらりと流れるブラウンの長い髪。
凛と響く、暴言。
「いや知るかよ…」
それに対し、返ってきたのは呆れ果てた・・・というより、疲れ果てた少年の声。長男、育矢のものだ。
「なんですって?」と、先程暴言を吐いた長女、萌懐。不機嫌からか、声のトーンが一段と低くなる。室温が一気に下がった。
萌懐がエアコンのリモコンを足で踏みつけているからである。
バカ犬がもう少し賢ければ、「ちょ、踏んでる踏んでるww」とかツッコミをして、冷房も止まるのだろうが。
残念ながら犬にそんな知能はなく、今や9度くらいにまで下がった部屋で萌懐の話は続く。
「またどっかに埋めてきたんでしょ。返さないと・・・」
脅すように萌懐はそう言い、なにやらゴソゴソと袋を取り出た。
そしてそれを眼前に掲げ、誇らしげに言う。
その袋は・・・
「おやつあげないからね!!!」
ビーフジャーキー
・・・(犬用)・・・
「意味わかんねぇ!!!!!」
育矢はそう叫び、バン、とテーブルを叩いた。
ほぼ同時に、テーブルに乗っていたティッシュ箱が振動で宙を舞い、育矢の顔にクリーンヒット。
「っっっだぁぁぁ!!!」
自分の顔ではなくなぜかメガネを押さえるいくワン。
実はメガネが本体とかそういうやつだろうか。
(なにこいつ・・・、バカなの?知能犬以下なの?てか私こいつの姉なの?うわやっだー。バカにも限度ってやつがあるだろ・・・)
萌懐が思ったことは、恐らく読者も全員が心に抱いた気持ちだろう。
ということで、バカのいくワンがいつかバカの頂点に立つ日がくるでしょう まる
この話はいい感じにまとめておいて、育矢の痛みが収まったようなので話は戻る。
「埋めねーし!食わねーし!犬扱いすんなし!」
「お前どこの名古屋の高校生だし!」
こんなツッコミをしたら、名古屋の高校生に非常に失礼である。
いろんな意味で。
その時突然、萌懐の袖を何者かが引っ張った。
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