プロローグ

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プロローグ

20××年の冬  日本の田舎というには大袈裟で、都会というには長閑すぎるごく普通の町で、ごく普通に彼女は暮らしていた。  遠野瑠璃子、それが彼女の名だ。  そろそろクリスマスを間近に控えた今日、瑠璃子は25歳のバースデーを迎えた。  お肌の曲がり角といわれる年齢となったが、親しい友人や同僚に祝われることはなにげに嬉しいものだ。  そんな瑠璃子の機嫌をいっきに下げたのは、無神経な上司の言葉だった。  今年売れないと売れ残るよー、ほら、クリスマスケーキも25日過ぎれば誰も買わなくなるしー 「ああ思い出しただけで腹立つあのハゲチョビン!!」  憤然と声に出してからハッと、瑠璃子は辺りを見回した。  誰かに聞かれていたらさすがに恥ずかしい。  誰もいないことを確認して瑠璃子は安心した。 「はぁ…」  雪の降りそうな空に一つ、溜息を零す。  社会人となってから一人暮らしをしている瑠璃子には家に帰っても待っててくれる人はいない。 「うう、寒い」  吐く息は白く、すぐに消えていく。  いつのまにか立ち止まっていた瑠璃子はなんとも虚しい気持ちを抱えたまま、また暗い夜道をとぼとぼ歩きはじめた。
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