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仕方なく瑠璃子はオウルを乗せたまま鬱蒼とした森の中を、妖精達に遅れないようについていった。
「わぁ……」
湖というキャンパスに鮮明に映し出された森の緑色と空の青色。
風が吹けばゆらゆらと水面が踊り輝き出し、妖精達が飛び交う。
「すごい……」
その幻想的な美しさに、自分の今の状態を忘れ瑠璃子は思わず見いってしまう。
「ほれ、早く自分の姿を確認したらどうじゃ」
オウルのせかしに我に返れば、妖精達の手招きしている姿が目に入った。
瑠璃子はゴクリと唾を飲み込む。
元々が平凡といっていいような顔だった。
きっとそれは男になってもそう変わらないはずだ、というかそう思いたい。
瑠璃子は逃げ出したい気持ちを抑え、そおっと水面に顔を覗かせた。
「………」
黙ったままなんの反応もしない瑠璃子にオウル達は首を傾げた。
もしかしたらショックのあまり固まってしまったのだろうか。
だとしたら慰めの言葉をかけるべきだろうとオウルの口が開きかけた時、
「び、美少年がいる……」
ポツリと零された言葉にオウル達の目が点となった。
16、17歳ぐらいだろうか、形良い鼻と唇、元よりも幾分短くなった髪と優しげな瞳はこれぞ日本人と思わせる漆黒。
白い肌にどこか儚げな雰囲気を感じさせる純和風の美少年の姿が瑠璃子を映す水面に映し出されていたのだ。
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