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──夕方17時06分
生まれて初めて、駆け込み乗車というのをした気がする。
駅に着いたのは午後17時03分。
で、次の電車は17時05分。切符を並ばずに買えたのが良かったのか、なんとか間に合った。
あと10秒程遅れていたら完全にアウトだった。まさに、ギリギリセーフ。
「はぁはぁ、人生の半分走った気がする」
「だらしないわね。それでもサッカー部?」
元です。と、言い返す余裕もない。
一先ず、俺と百合は空いていた席に座った。
でも、なんでこの人息ひとつ乱れてないの? 人間?
「人間で悪かったわ──ねっ!」
「ちょ、足っ!いや、マジで潰れっ……!?」
頭ではなく、さっきまで勇敢に走ってくれた足が潰された。小指とれてないかな。
そして百合の読心術。
なんで、余計な所だけ発動するんだ。狙ってんのか?
「暇だからwalkman貸して?」
「うん、貸す。貸すから足退けてくれないか?もう親指以外の神経遮断されてる」
そう言うと、百合はスッと足を退けてくれた。
俺は制服の胸ポケットから青色のwalkmanを取り出して、百合に渡す。
おお、少しずつ足の感覚が戻ってきた。指がとれてなくて良かった。
座りながらでもこんな力で足を踏めるんだなと、ふと思った。
人間って怖いね。
「……。」
百合は嬉しそうに音楽を聴いてる。どうやら俺の聴いてる曲でも満足するらしい。無言だけど。
「……ふぅ」
俺も、ようやく休憩出来た。
6限の自習で睡眠学習をしてからここまで休むどころか、酷い目にしかあってないからな。
この電車で座ってる時間が物凄く幸せに感じる。
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