第1話 約束

10/25
前へ
/184ページ
次へ
──夕方17時06分 生まれて初めて、駆け込み乗車というのをした気がする。 駅に着いたのは午後17時03分。 で、次の電車は17時05分。切符を並ばずに買えたのが良かったのか、なんとか間に合った。 あと10秒程遅れていたら完全にアウトだった。まさに、ギリギリセーフ。 「はぁはぁ、人生の半分走った気がする」 「だらしないわね。それでもサッカー部?」 元です。と、言い返す余裕もない。 一先ず、俺と百合は空いていた席に座った。 でも、なんでこの人息ひとつ乱れてないの? 人間? 「人間で悪かったわ──ねっ!」 「ちょ、足っ!いや、マジで潰れっ……!?」 頭ではなく、さっきまで勇敢に走ってくれた足が潰された。小指とれてないかな。 そして百合の読心術。 なんで、余計な所だけ発動するんだ。狙ってんのか? 「暇だからwalkman貸して?」 「うん、貸す。貸すから足退けてくれないか?もう親指以外の神経遮断されてる」 そう言うと、百合はスッと足を退けてくれた。 俺は制服の胸ポケットから青色のwalkmanを取り出して、百合に渡す。 おお、少しずつ足の感覚が戻ってきた。指がとれてなくて良かった。 座りながらでもこんな力で足を踏めるんだなと、ふと思った。 人間って怖いね。 「……。」 百合は嬉しそうに音楽を聴いてる。どうやら俺の聴いてる曲でも満足するらしい。無言だけど。 「……ふぅ」 俺も、ようやく休憩出来た。 6限の自習で睡眠学習をしてからここまで休むどころか、酷い目にしかあってないからな。 この電車で座ってる時間が物凄く幸せに感じる。
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加