13人が本棚に入れています
本棚に追加
次の駅まであと数分。
駅に着いてから走りながら聞いたことだけど、これから池袋に向かうらしい。
俺達は渋谷駅から乗ったから次は新宿。
池袋は新宿の次だからそこまで遠くない。こういう時は東京に住んでて良かったと思う。
池袋なら基本的に何でもあるからな。
買い物をするなら池袋って人も多いだろう。
「……あっ」
今、大事な事に気付いた。
「そういえば、金が無かったんだっけ」
一応財布の中身を確認してみる。
……345円。
いや、 今日拾った10円を合わせれば355円か。
マンガも買えねーよ。
でもカード持ってるから金おろせるか。ATMって偉大。
「なぁ、ゆ──」
先に金おろしたいって言おうと思ったけど、百合って呼ぼうとして止めた。
「……ったく、こいつは」
俺は制服の上着を脱いで、百合の膝の上にかけてあげる。
百合は、隣でwalkmanを聴きながら気持ち良さそうに寝ていた。
そして、姿勢が辛かったのか俺の肩に寄り掛かってきた。
茶色の綺麗な髪からは、ほのかに甘い香水の香りがする。
「調子の良い時に、はしゃぐだけはしゃぐからだっつーの」
顔を見ないようにして、今のうちに言いたい事を言っておく。
寝顔は見たら駄目だ。可愛いって領域を余裕で超えてる。
この香水の香りに耐えるので精一杯なのに、これ以上は無理だ。
情けないのは分かってる。けど、無理なものは無理だ。
早く、池袋に着いてくれ。
百合を退ける訳にもいかず、俺は池袋に着くのを待つしかなかった。
あれっ、でも百合って寝起きは……。
──そして、池袋に着いた後に変態と言われて殴られた俺は心の底から理不尽と叫んだ。
最初のコメントを投稿しよう!