第1話 約束

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──夕方17時48分 右手と左手に買い物袋。 もちろん、俺のではない。お決まりの荷物係ってやつをやらされてる、強制的に。 そしてこの買い物袋を買った本人はと言うと。 「きゃーっ!この服ちょー可愛い!えっ、でもこっちもヤバい!わー、どうしよう!?」 隣で超が付くくらいのご機嫌で服を見てる。 この異常なテンションのせいで、俺は何も言うことが出来ず、近くで立って荷物持ち。 「蓮っ、どっちの服が似合うと思う?」 突然喋りかけられ、ビクッとしてしまったけどバレない程度に何とか抑える。 百合の方を見てみると、可愛らしい白と水色の上着を比べるように俺に見せてきた。 こういう時って、どっちも似合うって言うのはNGなんだよな。色々な意味で。 どっちも本当に可愛らしくて似合うんだけど。 ここは慎重に選んでやるか。 「うーん…… 。白はどうだ?水色だと少しだけ派手な気がするし、合わせるのも難しいだろ」 「……?」 おいおい、なんだそのリアクション。 まるで、あの蓮がまともな意見を言うなんて……。みたいな顔しやがって。 「あの蓮がまともな意見を言うなんて……」 そのまんま言われた。 「悪かったな、まともな意見を言って」ふてくされる訳じゃないけど、なんか言って損した。 「うふっ、ごめん冗談。ありがとね──蓮。」 「──っ!?」 左の頬に温かい感触。 顔が熱くなっていくのが自分でも分かる。 「お前っ、こんな所で何をっ!? 」 「焦りすぎ。誰も見てないから大丈夫よ」 そういう問題じゃないだろ。 確かに、今のを見られるのも相当恥ずかしいけど。 今日で2回目のキス。 今までされた事もないのに、今日に限ってなんでこんなに……。 俺にそういう経験が無いって分かっててやってるだろ、絶対。
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