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流石に、怪我人に追撃を食らわすような百合ではないと思うけど……。
「おい待て!?体温計の持ち方間違ってるぞ!」
まるでナイフでも刺すかのような持ち方で俺に向けて来た。
そして、体温計を持たない右腕には嫌な予感しかしない中身がたっぷり入っているビンが握られている。
しかも蓋が付いてない。一体何に使うんだろうな、ははっ。
「まだ逃げる?」
「……。」
素直に土下座した。
プライド?
知るかそんなもの。
体温計を測りもしない所に刺されて、謎の薬品をかけられるよりマシだ。
「素直で宜しい」
ニコッと笑った百合は体温計と謎のビンを元にあった場所に戻してくれた。
この笑顔の瞬間だけ見ていれば、どれだけの男が食らいつくのだろうか、などと考える余裕があるのは何でだろう。
「蓮、今何時?」
俺はポケットから携帯を取りだし、即座に現在時刻を確認した。
所要時間、わずか0.5秒。成長したな俺。
「16時24分37秒です」
秒まで正確に伝え、任務完了。
我ながら素晴らしい成績だったと思う。
「ギリギリ間に合いそうね。ほらっ、行くわよ!」
急に腕を引っ張られて、俺は反射的に立ち上がる。
「えっ!?何処に?」
「買い物!早くしないと電車に遅れる!」
そのまま強引に引っ張られ、保健室を出る。
そして、ダッシュ。
人のこと引っ張ってるくせに、この人めちゃくちゃ早い。
「百合、はやっ……」
まともに喋れないまま。俺は百合に引っ張られて校舎から出た。いや、出された。
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