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──夕方16時30分
野球部の大きなかけ声、テニスボールを打つ音、サッカーの蹴る音、全てが同時に聞こえてくる。
今日もグラウンドは部活動で賑わっている。
出来ればこの時間帯にグラウンドは覗きたくないんだけどな。
グラウンドを横切って学校を出た方が早いと百合が言ってきかないんだから仕方ないか。
「蓮、早くっ!」
「はいはい」
校舎を出る時に腕は離してくれたが、歩くと色々危険が伴うので疲れない程度に走ってる。
それにしても百合の足がここまで早いとは思わなかった。
現在、帰宅部であるとはいえ俺も体力には自信がある。中学時代のサッカーで鍛えられたからな。
でも、百合はそんな俺と大差なく平気で走ってる。
正直、廊下であれだけ勢いよく走ったから校舎出たら疲れて歩くかなと思った。
けど、ほとんどペースが落ちてない。
もしかしたら、陸上部をやっても中々の成績を残せるんじゃないか?
テニスも出来て、陸上並の体力。おまけに美人。
反則だろ。
「遅ーいっ!早くしろーっ!」
遠くから、百合の声が聞こえてきた。
余計な事を考えているうちに、百合はとっくに校門を出てこちらに手を振ってる。
はえーよ。
「……はぁ」
「相変わらずラブラブな二人だなー」
聞き慣れた声が、後ろからもした。
ああ、一番面倒な奴に会ってしまった。
コイツに会いたくないからグラウンドを避けて帰ってるのに。
こんな事なら百合と同じペースで走れば良かったなと、今さら後悔。
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