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──夕方16時42分
また、顔に傷が増えた。
もう全治2、3日では治らないと薄々思えてきた。
右頬に右ストレート。
左利きのくせに何故にこうも、右側だけ集中的に殴るんだ。殴るなら左も考えろよ。
「あの……。百合さん?」
「……。」
そして、この不機嫌。俺にどうしろと言うんだ百合は。
「さっきのアレは笑い話であって、そういう意味は一切含まれてないからな?いや、マジで。信じて下さいお願いします」
「……。」
スタスタと1人で歩く百合の前に出て、高速土下座をするも俺の事を見てくれる様子もなく、そっぽを向いてまた歩き出してしまう。
「……はぁ。」
話をまとめるとこうだ。
1、俺が校門を出る。
2、少し歩いた所に百合がいた。
3、近寄る。
4、顔を赤らめさせながら殴られる。
5、現に至る。
4の時点で、さっきの龍希の女性に聞かれてはマズい声が百合に聞こえてしまったんじゃないか、という可能性が否定出来なくなった。
現に、今まで以上の威力で殴られたし。頬の内出血とかめちゃくちゃ痛いんですけど。
でも、痛いのは我慢するとしてまずはこの誤解を何とかしないと。
龍希と俺で話していたんじゃなくて、一方的に龍希が言っていただけって百合に伝わればどれだけ楽だろうか。
「百合、待てって!」
頑張るしかないか。
百合とはこれからも親友でいたいのに、こんな誤解で絶交なんて言われたら俺も嫌だ。
こうなったらやけくそだ!
俺は走り出し後ろから百合の肩を掴んで無理矢理顔をこちらに向かせた。
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