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「──っ!」
ふと、百合が右手を握ってきた。何だろう。キスした後に手を繋ぐと凄く緊張する。
「さて、行くわよ?」
あれ?
右手に力がどんどん入ってきてる気がするんだけど?
気のせいか。
「何処に行くんぎゃあっ、手がぁ、手がぁっ!?」
「買い物。何度も言わせないで」
気のせいではなかった。
手がヤバい、いやマジで手がとれる!?
あまりの激痛で頭が真っ白になる。女子高生の握力ってこんなに出るの?
「電車に遅れたら、頭潰すから」
どうしよう、冗談に聞こえない。
激痛で麻痺してる右手を引っ張られ、再び走り出した。いや、走り出された。
さっきの幸せは何処にいったんだろう。確かに手は繋いでるけど、感覚無いよ。
まぁ、いっか。
いつもの百合だ。
俺は電車に動くなと、心の中で連呼しながら百合と一緒に走って行った──。
まだお互いに“好き”なんて言ってない。
これから先、百合が言うかも分かんないし、俺も言うかも分からない。
けどな。
今が楽しければそれで良いと思う。
付き合ってたって楽しくなかったら意味がない。
逆に言えば、付き合ってなくったって楽しければそれで良い、俺はそう思う。
百合とは絡む度に殴られたり、口喧嘩したりと、周りから見たら決して楽しんでるとは思わないだろう。
けど、俺は楽しい。因みにMではないぞ、これは断言する。
百合が楽しいかは訊いてみないと分からないけどな。
だから──。
“好き”って言わなくてもいいかな。
俺のお前に対する気持ちは“好き”でおさまる程、軽いものじゃない。
お前に対する気持ちが言葉で伝えられるまで……。
俺は何も言わない。
そう決めた。
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