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田舎でも朝の電車は混む。
入学から二日目。
一駅なので特に速くもない新快速電車に揺られながら思った。東京や大阪の通勤ラッシュ時の大混雑には及ばないが、熱気で窓が曇るほど人が乗っている。慣れない揺れる電車にふらつき、何回か隣の大学生らしい人の靴を踏みかけてしまう。さらに自分の足も踏みかけられるからさらに気配りが必要である。
まったく朝から疲れる。
つくづく東京や大阪の通勤ラッシュに呑まれながら学校や仕事場に向かう人たちが勇者に思える。
昨日は入学式で、午後からのため母親が送ってくれたからこんなに混むなんて知らなかった。知っていたところでこの電車に乗らないと言うことではないのだが、心づもりがないぶんさらに精神的ダメージはデカい。
はぁ…。考えることもないから、クラスでやることになるだろう自己紹介の練習でもしよう。
俺の名前は田村智雪(タムラトモユキ)。
昨日から高校生になったばかりの高校生だ……あれ?なんか変だな…?それに高校生ってすでにみんな知ってるか…うーん…特技とか言わなくちゃならないのか?
ゴトッン
揺れたせいで踏まれそうになった足を避ける。ついでに、思考も中断され、今までうつむいていた顔を上げて周りをみる。
俺と同じようになれない電車に戸惑ってる奴5人。
仲間がいて良かった。
人は仲間がいると安心すると何かの本で読んだ。今がまさにその状況だろう。
〈次は~舞川~舞川~。お降りの際は足下にお気おつけになり手荷物をご確認ください。〉
ザワザワとした熱気に包まれた電車に響くのんきな声。
ガタッ
プシュー
停止のために大きく揺れた後、空気が抜けたような音がして電車のドアが開く。
ザワザワと忙しく電車を降りていく人の群。
俺もそれに流される。
これが後三年も続くかと思うとつくづく嫌になる。
電車もう一つ遅くしようかな?でも、ホームルームぎりぎりになるんだよな。
ぼんやりしながら流れに乗り、道を歩く。
歩く。
ひたすら歩く。
初めは国道沿いを歩いていたのだが、通学路は住宅街と山の中へと続いていく。
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