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赤い絨毯。何段かの階段があり、王座がひとつ。
武装した衛兵がずらーっと両脇に並んでいる異色な光景。
「あ、そ、相馬!!」
王座に座っていたのは、服こそちがうけれど幼なじみの相馬だ。
「ゆりあ!?」
相馬は目を見開き、王座から思わず立ち上がる。
「なんだよ、お前まで夢にでてくるなんて……」
「あ、やっぱコレ夢か。だよなー目覚めたら王子だなんて言われるからなんのこっちゃと思ってたけど」
相馬は爽やかに、親しみやすい笑顔を浮かべる。
「相馬、どんだけ私のこと思ってんだよ」
「普通逆だろ?ゆりあ、本当は俺のこと……」
「ちがうに決まってんだろっ!!」
ぎゃーぎゃー言い合いが始まった。ぽかーんと衛兵が二人を見つめるなか、青年はこほんとひとつ咳払いする。
「王子、姫は目覚めた。封印された地も扉が開きました。世界は再び、動き出したのです」
こつん。こつん。
靴音を響かせ、一人の女性が俯きかげんで謁見の間に現れる。
「登場人物は揃いました。相馬王子。ゆりあ姫、そしてタクト」
ふ、と女性が顔を上げて微笑む。
「なっ……」
ゆりあと相馬は絶句した。
「この夢から覚めたければ、物語を進め、結末を迎えることです。それが、どのような結末になろうとも」
服こそちがうが、ゆりあの母親そっくりだったのだ。
「お母さん!?」
ゆりあは叫ぶ。
だが、女性はにこりと微笑むだけ。
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