夢の始まりに

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「見ろよ、三年生の女子体育。ハードルかぁ……」 「まじ!?なん組?」 「1組。ほら、ゆりあ先輩居たぞ」 調理実習中の下級生が窓から顔を出し、グラウンドを見ている。家庭科室からグラウンドは目の前でよく見える。 「やっぱきれーだなー」 「喋らなきゃな」 「あー、確かに。黙ってれば美少女なんだけどなぁ…………」 教室の窓は全開だ。本人達は気付いてないかもしれないが、声は大きく、余裕で聞き取れる。 聞く気がなくても。 「もてもてだねー、ゆりあ」 親友の相崎菜々が、にししと笑った。 「うれしかねーよ。顔と中身が一致しないことくらい自分が一番分かってるよ」 溜め息を吐き、ゆりあは苦笑する。 女優の母と、俳優の父から受け継いだ容姿はゆりあのコンプレックスだ。 腰までの黒髪ロングストレート。くりっとした瞳。色白の肌。 「口悪いしねー」 「うるせーよ。ほら、菜々の番だろ、早くいけよ」 菜々はくすくすと笑いながら離れていく。 黙ってれば、可愛いのにね。 こんな子だと思わなかった。 どこにいっても、言われる言葉。言われなれた言葉。 「……あー、眠い」 三年生に進級し、早いもので4月が終わろうとしている。
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