夢の始まりに

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「頑張ってるじゃん」 全国展開のチェーン店。 のんびりと食器を片付けていたゆりあは、声をかけられ振り返った。 「つか、さぼるな。洗い物どうした」 同じ制服に身を包んだ男をひと睨みする。 「あー、終わった終わった」 嘘だ。ゆりあは眉間にぐっとシワを刻むと手に持っていた食器を押し付ける。 「片付けといて。洗い物。良かったな、仕事ができて」 目の前の男は苦笑する。 「お前、ホント可愛くないな」 「そりゃどーも」 同じ高校、同じ学年、ついでに幼なじみの宮戸相馬。一般的に見ると、格好いい部類に入る。 「あと1時間したらラッシュだから、それまでに片付けといて」 再び片付けに戻ろうとすると、相馬が手首を掴んだ。 「GWって空いてる?」 「は?」 唐突に、何の脈絡もなく尋ねられゆりあは間抜けな顔をしてしまった。 「GW。暇な日あったら良かったらきてよ」 「……バイト。相馬もバイト三昧じゃん。私誘うくらいなら彼女くらい作れって」 相馬は爽やかに笑った。 「そっくりそのままお前に返してやるよ。幼なじみとして心配してんだから」 「余計なお世話だって。あー、ほら、店長みてるし」 「やべー。ロープレ買った訳。やらない?」 全然やばいと思っていない様子で、持ち場に戻るつもりはないらしい。 「一人だろ。私がやってたら相馬、つまんないじゃん」 にこりと、それはもう爽やかに。 「ゆりあ見てるから別に?」 どすっ。ゆりあのパンチが相馬のみぞおちにクリーンヒット。 「さらっと変態発言すんじゃねぇよ、バカっ!!」 「……頬紅くない?」 「気のせいだ、ばか」 今度こそ踵を返してゆりあは片付けに戻った。
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