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お姫様みたいになれたらって思ったことは何度かある。ほら、綺麗で可愛くて、おまけに中身が可愛いだろ?
好きになるものとかも、かわいい。言葉遣いも丁寧で。
一度頑張っておしとやかにしようとしたけど、諦めた。私には無理だ。
「おい、起きないか」
姫になりたいなんて、むかーしに思っただけで、今もなりたいと思ってる訳じゃない。
そう、ましてや夢に見るほどなりたかった訳じゃない。
「ん、まだ早いってば……あと5分」
「……そうか。姫にはやはり目覚めのキスが欲しいか」
「キス?いらないし気持ち悪い……相馬冗談きついってー」
「……誰と間違えてるんだ?」
ゆりあはそこで初めて、聞き慣れない男の声だと気付く。
鼻腔をかすめる甘い花の香り。
「なっ……」
ゆりあは毛布をはねのけ、視界に映った光景に絶句する。自分の部屋ではないのだ。
目の前には、綺麗な癖っ毛の黒髪の青年。
「ちょ、ここどこだよっ!?」
「なんだ。まだ寝ぼけているのか」
豪華できらびやかな部屋は、異国のよう。
自分の身を包む服も絹のような柔らかな白いドレス。
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