第1章 まだ物語は始まらない

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夏の日だった。 晴れた水平線はどこまでも見晴らしがよく。 後ろから遠く、子供の歌が聴こえる。 小学校1~2年生たちが、手をつないで歌っているんだ。 懐かしい「花いちもんめ」… もう6年生になっているあたしたちは。 大人の談笑する丸太テーブルの中にも入れず。 小さな子たちと一緒に、歌うでもなく。 あたしと祐くんは、並んで海を見ていた。 涙がポロポロこぼれるのを隠すように。 それは、子供会の遠足。 祐くんが東京に行ってしまう、最後の夏休み。 遠くに行ってしまう祐くん。 お別れが悲しくて。 泣いちゃいけない、いけない、と思っても止まらない。 .
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