第1章 まだ物語は始まらない

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近所に住んでいて、町内会が同じ。 保育園も小学校も、同じ。 同じ学童クラブに通っていた。 あたしは身体が弱くて、学校も休みがちだったけど。 彼は無遅刻無欠席の健康優良児。 学校のプリント類は、いつも彼がうちに届けてくれた。 あたしの病名は、喘息。 アレルギー性喘息の子が多いけど、あたしは調べてもアレルギーが出なくて。 原因不明のまま、ひどい咳に苦しんでいた。 過敏になり、腫れて細くなった気管支が、あたしの呼吸をどこまでも苦しくさせる。 夜中に発作が酷いと、いつも死を意識した。 怖い、長い苦しみ。 母はあたしの咳をとても嫌がった。 あたしが学校を休むと、会社を休まなきゃならないから。 .
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