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「ちーねん」 必死にその本を読んでいると誰かに呼ばれた。 顔を上げれば大ちゃんがいた。 適当な場所から椅子を持ってきて座ってくる。 「随分楽しそうな委員会だな。えっと……近代恋愛史?そんなの読んで面白いのか?」 「少なくとも大ちゃんといるよりは何倍も楽しい」 と言ってまたページを繰る。 まぁ内容なんて頭に入ってこないけど。 「お腹は?昼食べてないだろ?」 「面倒。今の大ちゃんの相手するみたいに」 「ふーん、あっそ。もういいよ。心配して損した」 と言って椅子を片付けて図書館から出ていってしまった。 怒ってた……。 珍しい……。 何で大ちゃんが怒るの? 意味分かんない。 あぁ、今すっごく泣きそう。 何でだろう? 大ちゃんに冷たくされたから? 今一人ぼっちだから? それとも……? 「大ちゃんなんて大嫌い……」 「俺は大好きだけどな」 その声がして上を見るとさっき出ていったはずの大ちゃんがいた。 すぐに視界がぼやけてくる。 そうしてると大ちゃんはしゃがんで僕の涙を拭ってくれた。 「冷たくしてごめんな。ちょっと冷たくしないと知念本当のこと言ってくれないと思ったから」 「大ちゃんのバカっ……」 「はいはいバカですよー」 って言いながら僕のことを抱き締めてくれた。 それからあやすように背中を擦ってくれた。 さっき泣きそうになった理由分かった。 大ちゃんに嫌われたんじゃないかって思ったからだ。 そんなはずないのに、ちらっとそう思ったからだ……。 「大ちゃん好き……」 「さっきと言ってること真逆じゃん。まぁすっごく嬉しいけど」 「そろそろ離れないと人来ちゃうよ……?」 「離したくない」 と言ってぎゅっと強く抱き締めてくる。 今日は色んな大ちゃんが見れて嬉しい。 やっぱり大ちゃん大好き。
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