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ジャー。
シャワーの音がお風呂中に反響して滴が飛ぶ。
手や腹には目を覆いたくなるほどの青黒い痣が幾つもある。
でも僕はあいつに抱かれなきゃいけない。
大好きで大嫌いなあいつに。
絶対に恋しちゃいけないあいつに……。
キュッ。
シャワーを止める。
鏡越しに僕を見る。
よし、目は腫れていない。
良かった。
泣いてるなんて知られたら、また酷いことをされるに決まってるもん。
お風呂場から出ようとすると、声が聞こえた。
「おいっ、いつまでシャワー浴びてんだよ!お前は女か!!」
「ご、ごめんなさい……」
聞こえるか聞こえないかのか細い声で返事をすると
「早くしろ」
とだけ言って彼は出ていった。
僕はもう一度だけ鏡で全身をチェックしてお風呂場から出る。
脱水所には布きれみたいに薄いTシャツと体操服ズボンが置かれていた。
「どうせ脱ぐんだし、いっか」
そう言って半ば諦めの気持ちで用意された服を着る。
タオルで濡れた髪を拭く。
脱水所から出ると彼がクーラーの効いた涼しげな部屋でベッドサイドに座っている。
黒いモノトーンの家具しかない、整理された部屋。
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