◆禁忌

3/11
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「遅い、30分も経ってるんだけど」 「ごめんなさい……」 時計を見れば確かにこの部屋に入ってからちょうど30分経過していた。 彼はイライラしたように足を組んでこちらを見据えた。 「今日はもう寝るわ」 「えっ!?」 流石に驚いた。 自分で着いてきたとはいえ、こんな放置楽しくない。 ……なに、期待してんだか。 最近妙に自分がおかしい。 「なに驚いてんの?そんなに抱いてほしかった?」 面白い物を見るように笑う彼に、僕は激しく首を横に振る。 誰が好んで抱かれるんだよ!! 馬鹿か!! と言いたいが、その不敵な笑みさえも格好いいと思える僕は変態だ。 立ちすくむ僕に向かって彼は口を開く。 「別に抱いてやってもいいぜ?」 「……っ!!」 余裕な口調。 耳から感じる柔らかなボイスに酔わされる。 顔が熱い。 また彼はくすっと笑う。 ……勝てない。 「おねだりは可愛いほうが俺の好みだな」 「ふっ……」 悔しくて涙が出そうになって口を閉ざす。 その僕の唇にそっと彼の人差し指が当てられる。 暖かい、でも冷たい変な感じ。 上目遣いで彼を見れば彼の顔も赤らむ。 口で言わない代わりに目で訴えてみる。 どうやら今日は……僕の勝ち? 「誘い方としては満点」 そう言って人差し指の代わりに彼の唇が当てられた。 柔らかくて今度はちゃんと暖かい。 今日は優しい。 調子が狂う。 ちょっと口を開けば彼の舌が侵入する。 くすぐったいくらいに優しくて、丹念に僕の口内を攻める。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!