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少年
「ォオーン…ォオーン」
月明かりも雲に遮られた闇夜の中、孤児院に動物の吼え声が響き渡った。
孤児院に暮らすシスター・レミは首を傾げ呟く。
「珍しいわ。この辺りで犬なんてみかけないのに」
そこは買い物も苦労するほど、人が暮らす場所からは離れた孤児院。野良犬よりもふくろうや野うさぎが暮らす森。
レミは訝しがりながらも子供達の安全を考え、懐中電灯を手に見回りに出た。 先程聞こえた吼え声は既に聞こえてこない。懐中電灯だけを頼りに院の周囲を歩く。動物のいる気配もなく、院の入り口にある木で出来た簡素な門にさしかかった時、
「ふぇ…ふぇ…」
赤ん坊の鳴き声が聞こえてきた。
「はぁ…。またなのね。」
悲しみを含んだ声でレミは肩を落とす。そして門を開けると、そこには小さなバスケットの中に毛布でくるまれた赤子がいた。
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